- 2009-02-04 (水)
- Book
「写真の読み方」というタイトルに惹かれたというより、著者、名取洋之助に惹かれて購入。
アンコール復刻ということで表紙も緑と、岩波新書でも珍しい色。
日本の写真界の草創期といえば、木村伊兵衛や土門拳が著名だが、
名取洋之助も同時期の人で、世界からすると名前が出たのは二人よりも早く、
ドイツ留学中に目覚めた写真でドイツのジャーナル誌でデビューし、
『ライフ』の専属カメラマンとしても活躍した。
帰国してからは『日本工房』という事務所を構え、木村伊兵衛、土門拳、三木淳など、今や名だたる日本の写真賞の冠になる人たちを巻き込んで写真を活動を行っていた。
(3~4年前に、名取洋之助賞が遅ればせながら創設されました)
実は、私は個人として名取洋之助の撮影スタイルに共感する部分が割りと強いのですが、
それは例えば、彼が「純粋な写真家」というよりは、写真というツールを武器にもった「企画屋」であり、「編集者」であり、「アートディレクター」であるという点。
写真と+α(ex.言葉、構成、デザイン... etc)を用いて訴求力を強めていくというスタンスを取るからです。
確かに「一枚の写真の訴求力」となった時、木村伊兵衛、土門拳、ロバートキャパの撮った写真ほどに心に染みいりはしないのですが、翻って、合わせ技で表現に伸びを出す、というのは、写真単独での表現に力不足を感じないわけにはいかず、色々な表現手段との合わせ技を考えないではいられない僕にとってはすごく(若輩者が厚かましい限りですが)共感する部分があります。
そして、写真を素材の1つとして捉え、総合的にどのように表現をしていくと人に訴求できるか――という観点で語られた名取洋之助の言葉は、とてもコンセプチュアルで、それゆえに、例えばITが発達してきた現在においても、色あせることないメッセージとして伝わってきます。
著者没後から46~47年経つそうですが。
今の時代に重ねて読んでも「そうだよね」と共感する部分も多いです。
戦前・戦後の日本の写真(産業)の歴史という観点でも勉強になります。
※ちなみに全く持って蛇足ですが、個人的に、
名取洋之助の「アートディレクター」的な志向に、反発して(日本工房時代はすごいこき使われていたという話ですし)、土門拳は「絶対リアリズム」という風に傾倒していったのではないかなーとも、想像しています。
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